査定員のコメント
この度は、大変貴重なミキモトのケシ真珠製品を、店頭までご来店いただき、誠にありがとうございます。この東京の地で、ミキモトの歴史と美意識が詰まったケシ真珠のコレクションをお持ち込みいただけたこと、心より感謝申し上げます。
ケシ真珠は、その名前の通り、ケシ粒のように小さな、核を持たずに偶然に生まれた真珠です。アコヤ真珠のように真円を目指して養殖される真珠とは一線を画し、一つとして同じ形が存在しない、まさに「天然の芸術品」といえます。
ミキモトは、その高い鑑定眼をもって、この予測不能なケシ真珠の中から、強いテリ(光沢)と独特の造形美を兼ね備えた粒を選び出し、最高峰のジュエリーへと昇華させてきました。アコヤ真珠が「完成された美」だとすれば、ケシ真珠は「自然が生み出した偶発的なドラマ」であり、その不規則な形状の中に、真珠層が厚く巻き付いたことによる深みのある虹色のテリが凝縮されています。
特に東京の成熟したお客様は、単なる貴金属の価値だけでなく、「その真珠が持つ背景」や「個性が放つ存在感」に重きを置かれます。ケシ真珠は、量産が難しく、その希少性が再認識されている現在、ヴィンテージ市場でも熱心なコレクターに非常に高く評価されています。
私たちは、お客様の目の前で査定を行うにあたり、このケシ真珠が持つ「二度と巡り会えない唯一無二の個性」を、ミキモトというブランドの歴史的価値と照らし合わせ、詳細に分析します。お客様が長年大切にされてきた、この「真珠の小さな奇跡」に、最大限の評価額をご提示することをお約束いたします。お客様との対話を通して、このケシ真珠の持つ物語を深く理解できることを楽しみにしております。
査定ポイント
プロの査定員がミキモトのケシ真珠製品を評価する際、特に着目する「唯一無二の価値」を生み出すポイントを解説します。お客様がご自身のケシ真珠をチェックされる際の、透明性ある判断材料としてご活用ください。
1. ケシ真珠特有のテリとカラーの深み(核なしの優位性)
ケシ真珠は核がない分、真珠層(巻き)がすべてであり、その層の厚さが真珠の品質を決定づけます。
- 「オリエント」の強さ:ケシ真珠最大の魅力は、真珠層がぎっしりと詰まっているために現れる、虹色の深みのある光沢(オリエント)です。単に表面が反射するテリだけでなく、真珠内部から色彩が湧き上がってくるような複雑な輝きを厳しくチェックします。これは、真珠層の重なりが光を乱反射させることで生まれる、ケシ真珠ならではの「奥行き」であり、高評価の決定打となります。
- 天然の色彩:ホワイト、クリーム、ゴールド、グレーなど、その天然の色合いの濃さ、ムラの少なさ、そして均一性を評価します。特に、珍しい色味でテリが強いものは、希少価値が非常に高いと判断されます。
2. 造形美とデザインへの調和(偶然の芸術性)
ケシ真珠は不定形であるため、一つ一つの形が、ミキモトのデザインの中でどのように活かされているかが重要になります。
- ユニーク性とバランス:バロック真珠とは異なり、天然の過程で形成されたケシ真珠は、その形状自体がデザインの一部となります。例えば、一連のネックレスであれば、各粒の形が不揃いでありながら、全体として流れるようなリズムと統一感を保っているか。ブローチであれば、ケシ真珠の形状がモチーフに完全に呼応しているかを評価します。
- 厚みとボリューム:ケシ真珠は平たいものも多い中、十分に厚みがあり、ふっくらとしたボリューム感があるものは、より高い希少価値を持ちます。厚みがあるほど、テリの深さも増す傾向にあるためです。
3. 留め具・セッティングの評価(ミキモトの品質保証)
ケシ真珠を支える宝飾部分に、ミキモトの揺るぎない品質が反映されているかを確認します。
- 地金の細工と状態:真珠を支える金やプラチナの留め具や台座に、ミキモト特有の繊細で丁寧な仕上げが施されているかをチェックします。真珠の形状に合わせてカスタムメイドされたセッティングは、高い技術の証であり、ミキモトの「M」サインや刻印とともに、ブランド価値を裏付ける重要な要素です。
- 摩耗と欠けの有無:真円真珠と比べて穴を開ける位置がシビアなケシ真珠は、穴周りの処理が非常に重要です。穴口周辺に真珠層の欠けや剥がれがないか、また、留め具が接する部分に摩擦による摩耗がないかを細かく確認し、ジュエリーとしての耐久性と美観が保たれているかを総合的に判断いたします。